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東京競売ウォッチ

2015年4月21日

第274回 高額物件にも思い切った入札価格

 競落水準の上昇が続いている競売市場であるが、高額物件にも思い切った入札価格設定がみられる。4月9日開札で、入札56本を集め、1番人気になった物件の落札価格が高価格、高上乗せ率であり、目を引かれた。

 その物件は東京メトロ副都心線「北参道」駅から徒歩約9分に立地する土地付建物であった。土地は西側で幅員約8mに面する約25.6坪、建物は築25年超の鉄筋コンクリート造地下1階がある4階建て、延床面積約72坪である。建物は店舗、事務所、倉庫の仕様になっており、所有者が自ら使用していたもののようだ。

 この物件の落札価格は1億8,100万円と、売却基準価額5,9811万円の3倍を超える水準であった。

 ちなみに、この物件の正面路線価は坪約300万円である。また、この物件の評価書においては、建物の評価額は保守状態が悪いこともあって1,500万円弱とされている。これから考えると落札価格における土地代相当は1億6,600万円程度となり、これは1坪あたり650万円弱である。したがって、土地は路線価の2倍を優に超える価格で競落されたことになる。

 しかも、この建物は修繕して商品化できるかどうかは微妙であり、解体し、再建築せざるを得ないかもしれない。

 仮にワンルームマンション建設であれば10戸程度と考えられ、年収は1,200~1,500万円だろう。建設費(約1億円)を合わせて考えると表面年利回り4~5%の競落ということになりそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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