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東京競売ウォッチ

2023年05月09日

第648回 管理不全1R、個人落札

 平成バブル時に多くの不動産会社が競って1R マンションを分譲した。それら分譲会社の多くは経営破綻をして姿を消している。そういった物件でも管理会社が適正な管理を施していれば、物件価値は維持される。逆に管理が不行き届きであると、共用部分が廃れ物件の価値が損なわれてしまう。4月26日開札では東京メトロ有楽町線「地下鉄赤塚」駅徒歩約6分に立地した築33年弱を経過した1Rが対象になった。専有面積6坪強で、月額共益費込み57000円にて賃貸されている。この物件の売却基準価額は560万円で、入札は1本のみに止まり、最高価818万円弱で個人が落札した。入札が僅か1本であったのは、このマンションの管理組合は稼働しておらず、管理状態が悪いことによる。管理行為の実施主体は不明で、管理費や修繕積立金についても取り決めが明らかでない。共用部分では鉄部の腐食、外壁の破損などが見られる。総戸数が11戸と小規模でもあり、管理会社に依頼する規模ではないこともあろう。また投資用マンションだけに自主管理も行われにくい。

 現状の賃貸収入であれば表面利回りは競落価格に対し年8%超となるわけだが、今の管理体制では将来の価値保全に疑問があり、応札が少なかったようだ。もしこの物件が競売では無く、通常売買であった場合は仲介会社が管理について説明を施すことから購入者は現れにくかったと思う。競売故に売れた物件なのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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