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スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2011年3月7日

第81回競売ならではの特殊物件

 マンションの落札競争激化の中、競売市場が良い仕入れ先であるのか、最近は疑問が呈されることも多い。確かに再販しやすいと思われる物件は、明らかに落札業者の再販利益が圧縮されているだろう。

 そんな中、競売でしかお目にかかれないような特殊物件にも挑戦する会社も見受けられる。2月17日開札において、共有持分の物件に9本の入札が集まった。

 その物件は西武池袋線「練馬高野台」駅徒歩約19分に立地する一戸建てである。土地は北側で幅員6mの公道に面する約34坪で、建物は築約20年の木造2階建て、延床面積は約35坪ある。

 競売の対象はこの物件のうち共有持分20分の4であった。この物件の売却基準価額は394万円であったが、これに対し、落札価格は617万円と50%を超える上乗せであった。

 ちなみに、こういった物件の売却基準価額は全体の土地、建物評価に共有持分を乗じたものに、さらに共有持分であるがゆえの市場性修正としての減価を行う。

 この物件の市場性修正は30%の減額であった。この物件の落札価格は共有持分であることによる市場性修正前の水準以上である。

 こういった共有持分物件の資金回収方法は、①他の共有持分者に買い取ってもらう②逆に他の共有持分を買い取り、そののち全体を売却する③他の共有持分権者と一緒に全体を売却するーーといった方法が考えられる。

 そして、それらの協議がまとまらなかった場合は、他の共有者を相手に共有物分割の請求訴訟を行い、その上で、全体を競売にかけることになる。これが最後の資金回収の手段となる。

 落札したのは不動産会社のようだが、入札価格は全体が競売になった場合の落札推定価格から逆算して設定しているものと思われる。

 競落水準が高い中、特殊物件への挑戦業者は今後も増えそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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