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東京競売ウォッチ

2010年11月29日

第68回共同担保の底地が対象に

 競売物件において、借地権が設定されている土地、つまり「底地」はあまり対象物件になるケースがない。税金の滞納処分として公売に付されるものが多いのと、対照的である。

 これは民間金融機関が底地について、その担保価値を認めていないことが主因である。ただ例外として、他の所有権物件の共同担保として抵当権等を設定したケースが、競売に付されることはある。

 11月9日開札で、丸の内線「新高円寺」駅徒歩約2分の立地で、3つの底地が開札対象になった。そして、この3つの底地は丸の内線「四谷三丁目」駅徒歩約2分に立地する所有権の商業ビルと共同担保となっており、それも同時に開札対象となった。

 その物件は新宿通りに面する70坪近い敷地と、その上の5階建て、延床面積約240坪のビルであり、売却基準価額も4億5,236万円という高額であった。結局、このビルについては任意売却が成立したらしく、事前に「取下」になった。その一方で、残る3つの底地が開札対象となり、そのすべてが落札されていった。

 さて、それら底地はどのように売却基準価額が設定されているか、評価書を見てみると、そこでは公示地価から推定される更地価格に対し、底地権割合(1-借地権割合)を乗じ、さらに30%を引いた値になっている(流動性が低いということでの修正)。この場合、地代等収入とは関係なく価額が決まっている。しかし、実際は(入札2本で)売却基準価額を下回る価格で落札されている物件と、(入札5本で)売却基準価額を上回り、落札された物件とがあり、その違いはおそらく地代の額や更新料の収受見込みという収益の多寡によると思われる。

 底地は買受人自ら使用できない土地であり、評価を出す場合おいては、地代等からの収益還元法も参考にすべきかと考える。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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