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東京競売ウォッチ

2012年1月24日

第120回 2011年の市場分析(上)

 今週と来週、本欄では2011年の東京地裁本庁の競売市場を分析していきたい。

 2011年と言えば、何と言っても、東日本大震災であるが、果たしてこれが競売市場にはどのような影響を与えたのであろうか。



 3月11日の震災発生により、東京の競売不動産も、リスク回避の観点から入札が少なくなることも予想された。しかし、震災後に初めての入札締め切りを迎えた3月24日の開札では、開札対象物件62物件すべてに入札があり、100%落札であった。また入札の競争指標である、落札1物件に対する入札本数も約9.9本と、震災前と比較して約1割程度の減少で、思ったほど影響を受けなかった。表1を見ると、2011年は結果として、2010年よりむしろ落札率が高い。結局震災が落札率を低下させなかったのである。

 さて、その原因は、一つに表2を見て分かるとおり、開札対象数が2010年に比して1割以上減少したことにあろう。これは中小企業金融円滑化法による、競売差押の抑制効果などの結果である。

 もう一つは、表2にあるとおり、開札対象物件のうちのマンションの比率が2011年、一段と高まったことにある。

 震災後一時は新築マンションのデベロッパーが、供給を見合わせる事態が生じた。その結果、需要の受け皿として、中古マンション、とりわけ新耐震基準で建設された一次取得者層向け物件の販売が、一般市場にて取引堅調であったのである。これを受けて競売市場でもマンションに多く入札が集まり、ほぼ完売となった結果、全体の落札率も上昇したというわけである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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