リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2024年08月06日

第708回 階高による価格差広がる

 東京23区の新築分譲マンション供給戸数は減少傾向にあり、その分中古マンションへの注目が集まっている。中でもタワーマンション、とりわけ上層階のマンションの価値が高い。

 7月10日開札ではJR山手線「大塚」駅徒歩約4分に立地する「ステーションフロントタワー」28階の2LDK、専有面積約25坪の部屋が対象となった。このマンションは築24年で、30階建てであり、対象住戸は上から2層目の上層階の部屋である。このマンションの売却基準価額は6864万円であったが、これに対し23本の入札があり、最高価1億690万円弱で再販業者が落札していった。落札価格の専有面積坪単価は428万円弱であった。

 ちなみにこのマンション、今年2月に成約事例があったが、それは専有面積約22.4坪の4階の部屋であった。8250万円の売り出し価格に対し、成約価格は8000万円であり、成約価格の専有面積坪単価は360万円弱であった。先の競落物件と比較すれば15%以上安いことになる。そしておそらく再販価格は専有面積坪単価が500万円程度となるであると予想されるが、それであれば成約事例より4割近く高い価格水準となる。

 マンションの価格はそもそも上層部の方が従前から価格が高くなるものであるが、近年のタワーマンションは価格の階高差がかなり大きくなっている。また上層階で且つ専有面積が大きいほど専有面積坪単価が高い傾向もある。

 ところで先の競落事例は強制競売のヌ事件で、先順位の抵当権が6000万円以上設定されていたものの、後から裁判経由で競売に付されている。申立て債権者が配当を受けられるのも上層階の希少住戸であったからと言えるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.