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東京競売ウォッチ

2023年01月10日

第632回 病死ありシェアハウスに5本の入札

 平成終わりの頃流行ったものにシェアハウスの建設がある。その中で女性専用シェアハウス「カボチャの馬車」が世間を騒がせた。高い利回り予想を見せ、一般投資家にローンを組ませ、割高の不動産を売却し、利益を得ていた。しかし想定の入居率を確保できないことが多々生じ、サブリース賃料が滞った。それにより購入した投資家がローン返済に窮する事態となり社会問題になった。

 競売市場にもこの破綻した「カボチャの馬車」物件が登場して数年経過しているが、22年12月7日開札で西武新宿線「鷺ノ宮」駅徒歩約8分に所在する築6年で全6室のシェアハウス(木造2階建、延床面積約33坪)が対象になった。敷地は路地状で40坪弱あるが、この路地状であるところが、仕入れ価格を抑え販売利益を大きくする手法であった。

 ただこのシェアハウス、1階の1室で病死があり、死後3週間放置された事実がある。これが為、評価書においては20%の減価が施れ、売却基準価額は3888万円であった。これに対し入札は5本あり、最高価4666万円にて競落されていった。病死がある程度であれば果敢に取得に動く入札者もいるようだ。しかしシェアハウスは入居審査が簡単で一時金が少ないことを利点として入居者を募ることで、こういった事故のリスクは通常の賃貸物件より大きいように思える。取得後の管理運営をどうするか、落札者にとって重要な問題であろう。2023年もシェアハウスの競売対象が見られるであろう。

 ちなみに2022年の最後の開札は12月20日であったが、この回は100%競落となり高落札率で一年を終えた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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