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東京競売ウォッチ

2012年10月30日

第156回 下町にある元工場の物件

 近時、都市部、とくに下町の工場はどんどん減少しており、その土地は多くが住宅用地に転用されていっている。そこで問題になるのが、土壌汚染である。かつては土壌の重金属や化学物質等による汚染について、不動産取引において、それほど気をつけていなかった。しかし、このところ大きな住宅地取引の障害になってきている。

 競売不動産にあっても、今は現況調査や評価にあたってチェックすべき項目になっているのである。

 さて10月11日開札で、元工場の物件が開札対象となった。この物件内では、かつてダイカスト(金属鋳造金型)の製造を行っていたらしく、重金属等による土壌汚染の懸念がある。

 その物件はJR総武線「錦糸町」駅徒歩約8分に立地し、土地は北側で幅員4m強の公道に面した約55坪で、建物は築55年を経過する古い作業所他である。多くの入札検討者は建物解体の上、住宅用地への転用が最適と考えるであろう。

 評価書では、土壌汚染による減価は約1割なされているが、これについては根拠がとくにない。所有者の協力を得られないため、汚染の程度を調査できないのである。

 この物件の売却基準価額は3,622万円であったが、これに対し13本の入札があり、最高価6,333万円にて競落されていった。土壌汚染リスクについてどの程度見込むのか、その点が大いに入札価格に影響を与えたであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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