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東京競売ウォッチ

2015年4月28日

第275回 孤独死のあった心理的瑕疵物件

 巷間孤独死の問題がよく取り上げられている。高齢化社会が進み、ますます注目されよう。4月9日に開札されたマンションもおそらくは孤独死があった物件である。

 そのマンションはJR山手線「大塚」駅徒歩約6分に立地する築18年の鉄筋コンクリート造で、間取りは2LDK、専有面積は約15.5坪の部屋である。

 実はこの物件、一昨年の10月に1回落札されている。この時は、売却基準価額1,542万円で、これに対し22本の入札があり、最高価2,455万円にて競落されている。

 ところが、今月再び開札対象になったのである。これは、競落者が代金納付せず、売却許可を取り消した結果であろうと思われる。その理由は、開札2カ月前、死後約1カ月経過した所有者の遺体が発見された事実を競落者が知らなかったためと推察される。確かに、この当時の現況調査報告書や評価書には、この所有者死亡の件は一切記載がない。それにも拘わらず、近所では遺体の腐臭が漂い発見された経緯から孤独死の事実や、遺体が物件内で腐敗していたことは知られていた。競落者は代金納付前にその事実を知り、売却許可を取り消したようだ。

 今回の競売は、この事実を評価書等に追加記載し、売却基準価額も見直しして行われた。ちなみに、今回の売却基準価額は1,118万円であった。今回の評価書では、前回の売却基準価額に対し、30%を、孤独死及び遺体腐敗の風評のための減価を施している。

 結果は16本の入札があり、最高価2,292万円にて競落された。前回より低い落札価格であったが、当時より増加した滞納管理費等を考えれば、かなり近い競落水準である。活況の競売市場では心理的瑕疵物件にも果敢な入札があるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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