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東京競売ウォッチ

2012年6月5日

第138回 中井の築浅ワンルーム

 不動産の価格はファイナンスに大きく左右される。そして、その現象はワンルームマンションの競落事例においては、とくにわかりやすい。ワンルームマンションは収益を目的にし、自己資金が少ないサラリーマンが、金融商品的に購入するケースが多いためである。

 5月17日開札で一番人気となったのが、築浅のワンルームマンションであった。その物件は西武新宿線「中井」駅徒歩約3分に立地する、専有面積約6.8坪の部屋で、築4年である。

 賃借人がおり、月額8.3万円の賃料で占有中である。賃借人の権利は買受人に対抗できないものの、そのまま賃借し続けてもらうことを前提にすると、管理費等や固定資産税等を差し引いたネットベースの収入は年約82万円となる。

 この物件の売却基準価額は613万円で、滞納管理費がないことから、年13%強の利回り水準の競落である。

 これに対し、入札は36本集まり、売却基準価額の2.3倍に近い、1,389万円で再販業者が落札していった。競落価格ベースで、年約6%の利回り水準である。再販では、さらに低い利回りで売却されるのであろう。

 一方でこの日、地下鉄丸ノ内線「新宿御苑」駅徒歩約3分の好立地のワンルームマンションには、わずか3本しか入札はなく、売却基準価額910万円に対し、少し上乗せされただけの936万円で競落されていった。

 先の一番人気の物件と同じく賃借人がついているものの、築30年と古いことなどから、購入ローンが、先の物件と相異して付きにくいことから、入札が少なかったと考えられる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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