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東京競売ウォッチ

2024年08月20日

第709回 路線価の1.6倍強落札目黒区の土地

 競売市場では更地物件の割合は低い。今年1月から6月までの開札で107物件の対象があったが、土地のみは僅か4件であった。これは不良債権の担保不動産でも更地は流動性が高く、ほぼ任意売却で決着することが理由として大きいと思う。その中でも更地が競売市場に現れるのは共有物分割請求訴訟に由来する換価競売の場合が多い。これは複数の相続人による共有状態にある土地が何らかの理由で共有者全員の合意の基に任意売却が進まない場合に、競売制度を利用するからである。

 7月31日開札では、目黒区で東急東横線「自由が丘」駅徒歩約9分に立地する約65坪の更地が競売対象となったが、この競売が先の共有物分割請求訴訟由来の競売であった。現状は月ぎめ及び時間貸し駐車場9台分となっている。この土地の売却基準価額は2億1744万円であったが、これに対し20本の入札があり、最高価3億4000万円強にて競落されていった。競落価格は1坪あたり520万円強で、これは相続税路線価の約1.62倍である。高水準に思えるが、この土地は西側と北側で幅員4m以上の公道に面しており、建売分譲用地として好都合、また駅からも比較的近いことで高い水準で競落されたのだろう。

 また目黒区では新たな区画を作り建物を建築する場合、その敷地面積を70㎡(21坪強)にしなくてはならないが、この競落土地は効率良く3宅地に分割ができる。この点も高値が付いた要因だろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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