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東京競売ウォッチ

2022年8月9日

第613回 借地権が認められず再競売

 競売は期間入札が開始された後でも開札に至らないケースは多々ある。そのうち多くは任意売却が成立したことに伴って取下げや延期になった場合である。こういった場合には以後競売市場には登場することが無い。しかし「変更」という事由で開札されない場合は、再度物件明細書などの記述や、評価額が変わって期間入札に付される。これは当該競売事件の権利関係者が、その売却条件について、事実と相違すると異議を申し立てたことによって生じる。そしてこういった場合の多くは従前の売却条件(売却基準価額など)がほとんど変わらず再入札となる。

 しかし、7月21日開札における物件は昨年10月6日開札の時は売却基準価額が831万円であったが、今回は2375万円に大幅に変更され期間入札に付された。この原因は競売対象であった土地について前回は賃借権を認定し、売却基準価額を設定したものを、今回はそれを認定しなかったことによる。この物件は西武新宿線「沼袋」駅徒歩約9分に存する土地で広さは約25坪である。そしてその土地上には軽量鉄骨造の戸建てが建っている。親族間で土地と当該戸建てを所有しあっているが、当初は戸建て所有者が主張する土地賃借権(地代は供託中)を裁判所は認定していた。

 しかし、今般その賃借権を裁判所は認めなかった。結果として前記売却基準価額に対し9本の入札があり、最高価4933万円強で業者が落札した。「変更」によって売却条件が大きく変わった例であったが、競落後建物所有者との間では賃借権の存否について再度揉める可能性もありそうだ。競落者に交渉力が必要になるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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