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東京競売ウォッチ

2010年5月31日

第43回低グロスのワンルーム

 最近、リーマンショックからようやく回復しつつあるところで、ギリシャ問題が顕在化し、株価も低落傾向にある。また外貨預金など、為替に関連した運用も為替相場の乱高下でリスクが高くなっている。こういったところから個人の資金運用方法について、頭を悩ませている方も多いであろう。

 不動産投資は従来から、なるべく物件価格に近い借入れを起こすことによって、投資効率を引き上げるケースが多かったが、現在の経済情勢では賃借人の確保が以前より厳しくなっていることなどから、借入れ依存の不動産投資の危険性が感じられてきている。そんな傾向もあってか、競売では低グロスのワンルームマンションなどに個人の入札が目立ってきている。

 5月14日開札において、都営大江戸線「西新宿5丁目」駅徒歩6分に立地する、築26年で専有面積4坪強と狭小面積のワンルームマンションであったが、売却基準価額358万円のところ入札16本を集め、最高価520万円にて個人が落札していった。

 この物件には最先の賃借権者がおり、賃料月額6万円にて賃貸されている。本物件の1年間の経費は管理費等及び固定資産税他で約年11.5万円であるので、年実質収入は61万円となる。したがって、競落価格は年12%利回りの水準ということになる。

 また、同じく個人落札の低額ワンルーム物件で、京成金町線「柴又」駅徒歩2分の物件(築17年、専有面積約6坪)も売却基準価額283万円のところ入札7本入り、最高価455万円で落札された。この物件は占有関係が不明瞭であるが、それであってもこの結果であった。

 現金買いがしやすい低グロスの収益物件の個人ニーズが堅調である証であろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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