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スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2009年12月14日

第21回 マンション滞納管理費問題の根深さ

 毎年、競売物件の取得に関するセミナーの講師を何回か担当させて頂いているが、今年はセミナー参加者が昨年などに比べるとかなり増加した。

 11月25日に本紙週刊住宅新聞社が主催する「競売不動産買い方講座」にて、この種類のセミナー今年最後の講師を務めたが、このセミナーも盛会であった。

 セミナーでの質問事項はこのところ、マンションが入札活況を牽引しているとあって、滞納管理費に関することがあった。

 競売市場でのマンションでは、多額の滞納管理費を生じている物件も多く、買受人がこれを承継することになることから、その承継金額や範囲についての関心が高くなる。

 一方で滞納管理費を回収しなければならない管理組合も、競売により回収できれば都合が良い。金融機関が競売に付して、結果競落されれば、買受人に請求でき、この場合は特段自分たちが行動しなくとも回収できる。

 しかし、11月27日開札では管理組合が滞納管理費に対する先取特権をもとに競売に付した物件があった。その物件は足立区のマンションであったが、売却基準価額が1万円であり、滞納管理等が1,160万円とある。実は売却基準価額を算出するときに計算上はマイナスになってしまったが、仕方なく1万円の設定としたのである。しかも、当該物件の占有者は反社会勢力の事務所であるという特殊物件である。

 結果は、それでもこの物件に6本もの入札があり、56万円にて競落された。ただ、この物件は占有者の明渡しは簡単ではないだろう。明渡しが不首尾に終われば買受人は代金不納付による権利放棄をするかもしれない。代金不納付による損害は入札保証金わずか2,000円なのである。そうなれば、結果として管理組合の滞納管理費回収が円滑にいかないことになる。再び競売市場に出てくることも考えられるわけである。滞納管理費問題はなかなか根が深い。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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