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東京競売ウォッチ

2025年09月23日

第761回 国が地主の借地権付建物、高上乗せ競落

 借地権付建物の競売物件は、競落後借地権の名義変更や場合によっては底地の買取などを地主と交渉することが必要である。この交渉は地主によってかなり相異する。名義変更自体を拒むこともある一方で底地買取に応じるケースもある。競落者としては不確定要素が多く事業化のリスクが高い競売物件と言える。

 しかし、地主が国である場合は全く違う。国は相当額の承諾料で借地権譲渡に応ずるし、その上で底地の売却にも応ずる。しかも譲渡承諾料や底地の売却価格は国が定めた相続税路線価を基準に予め見当がつくのである。その点では、事業化の難易度は所有権の土地付建物とあまり変わらない。

 9月10日開札では常磐緩行線「綾瀬」駅徒9分に立地する借地権付建物が対象になった。土地は国が所有者の借地で面積は約53坪である。そこに木造2階建ての古家が建っている。この物件の売却基準価額は2970万円であったが、これに対し13本の入札があり、最高価5790万円にて不動産会社が競落した。売却基準価額に対する上乗せ率は約95%である。この高上乗せ率は地主が国であるからこそである。

 この物件の相続税路線価(34万円/㎡)と借地権割合(60%)からすると、名義変更料は400万円程度、さらに底地の買取価格は約2500万円と推し量られる。そうなると競落者は所有権での総取得コストは9000万円程度となり1坪約170万円と見込まれる。確かにこれであれば十分採算が取れるように思う。国が地主物件には多くの入札者が現れるのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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