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東京競売ウォッチ

2020年1月7日

第493回 孤独死マンションに大量入札!!

 現在高齢化社会を背景に老人の孤独死が増加している。競売不動産の中にも孤独死があった物件が対象になるケースは散見される。12月19日東京地裁では2019年最後の開札が行われたが、その中に孤独死があったマンションの部屋が対象になった。

 そのマンションは京王井の頭線「神泉」駅徒歩約3分に立地し、築36年を経過している。この部屋には所有者の父親が居住しており、その父親が孤独死したとのことである。故人の私物が大量に放置されていたまま整理されていない状況のようである。専有面積は約12坪の2DKで、売却基準価額は2354万円であった。これに対し18本の入札があり、最高価3208万円強で落札されていった。

 この価格はレインズの最近の成約事例と比して、さほどの割安感は無い。滞納管理費は無いものの、残置物の処理やリフォーム費用を考慮すれば、過去の成約事例は2割程度上回らなければ再販利益は得られまい。さて孤独死の件については評価書では一切減価されていない。これは故人が亡くなった翌日発見されたということで、特段の臭気などが無かったことが理由と思われる。

 ただこの申告は所有者だけのものであるので、確実とは言えない。気になるところは孤独死があったことを再販時に購入者に告知すべきことかどうかである。競売資料として公になっているだけに、全く触れないと後の損害賠償リスクもあろう。故人の亡くなった時の状況を詳しく知ることができれば良いが、競売だけに難しいかもしれない。競落会社の販売方法が気になるところではある。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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