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東京競売ウォッチ

2011年7月12日

第98回区分所有の飲食店舗

 震災後の不動産市場において、堅調なのは、実需のマンション等の住宅と言われる。そんな中、6月23日開札で区分所有の店舗、しかも飲食店という特殊物件に、そこそこの入札があったのに目を引かれた。

 その物件は都営新宿線「新宿三丁目」駅徒歩約4分に立地するマンションの1階に位置する店舗である。

 専有面積は7坪弱で飲食店舗となっている。現在の賃借人は月額18万円の賃料を負担しており、この部屋の管理費等や、その他のオーナー負担や固定資産税等を考慮すると、実質年収は約160万円である。

 これに対し、売却基準価額は588万円で、年25%程度の利回り水準になる。高利回りのためか、結果は入札8本が集まり、最高価1,006万円強にて落札されていった。滞納管理費などを考慮すれば、年約15%程度の利回り水準である。

 このマンションは築32年を経過しているが、それでも15%という、高利回りが期待できれば、応札はあるようだ。

 また6月23日開札で一番入札を集めたのは、東急田園都市線「桜新町」駅徒歩約11分のマンションであった。

 この物件は築5年強と新しく、大手(住友不動産)分譲の物件で、専有面積は21.7坪で、売却基準価額は2,950万円であった。

 これに対し入札が27本集まり、最高価5,059万円にて業者が落札していった。ちなみに、この物件は12階建てで、総戸数33戸の小規模マンションである。

 対象住戸は最上階に位置し、南向きという好条件も大量入札の要因になったのであろう。ただ震災後、高額物件について、こういった内陸部の中小規模のマンションが、湾岸のタワーマンションなどに代わって人気を得る傾向の表れでもあろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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