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東京競売ウォッチ

2015年10月27日

第297回 高円寺の借地権付建物

 競売市場には借地権付建物が一般市場における割合より多く見られる。ただ、借地権付建物は地主の名義書替承諾が必要であるが、その名義書替承諾の条件は決まったルールはない。あくまで地主と競落者の相対で決めるものである。

 入札者としては、競落後にどのような条件を地主から呈示されるか、そもそも譲渡承諾を得られるのかが不明な状態で入札することになる。

 入札にあたって事前に地主に問い合わせたいところだが、多くの地主にとって、入札者は、その時点では単なる第三者に過ぎない。したがって、名義変更条件については回答を得られないケースがほとんどであろう。

 その点、国が相続税の物納等によって地主である場合は、入札前にあらかじめ名義変更の条件が確認できる。また底地売却も希望すれば受けられ、さらにその売買価格もおおむねわかる。そのため借地権付建物といっても、所有権の戸建てと変わらない応札数がある。

 さて9月10日開札で、個人が地主である借地権付建物に10本の入札があり、売却基準価額(1,501万円)の約1.7倍(2,525万円)にて個人が落札していった。これほど応札があったのは、1つはJR中央線「高円寺」駅徒歩約3分という好立地であること、次に建物が築14年と古くないことがあったと考えられる。そして、さらに応札を誘ったと思われる理由がある。それは地主が現況調査時に希望する名義変更料の額、名義変更後の改定地代を述べており、名義変更条件をあらかじめ入札者が把握できたことである。

 借地権付建物の入札は、地主の名義変更希望条件をあらかじめ公開することによって促進されるのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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