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スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2015年10月20日

第296回 減少が続く競売対象物件

 東京地裁では周知のとおり対象物件が減少し、競落のチャンスが少なくなっている。この現象は東京だけでなく、他の大都市圏でも同じように起きているようだ。例として弊社が懇意にしている福岡地裁本庁での競売物件のニュース速報を扱っている会社から頂いたデータを見てみると、対象物件が2013年通年で390件、翌2014年は359件と減少している。そして今年の上期は159件と、通年では300件強と見込まれる水準に低下しており、3年間で3割以上の減少ペースになっている。

 東京地裁本庁は2013年通期が1,693物件であったが、昨年2014年は1,266物件であった。そして今年は上半期で492物件と、年間1,000物件ペースで、結果として3年間で6割程度減と、福岡を大きく上回る減少になる可能性が大きい。

 こういった現象の大きな要因は金融機関の不良債権処理が減少していることに他ならない。というか、不良債権として認識する融資が減っているという方が正しいだろう。

 これを裏付けるデータとして、帝国データバンクの全国信用金庫の返済条件変更の件数がある。これを見ると、貸付条件変更等の申込みをした貸付債権数は、2013年3月末では27万5,128件であるが、今年2015年3月末では41万543件となっていて、2年間で実に約50%増加している。

 これは全国の信用金庫が元金返済が予定どおりできない取引先の要望を受けて、回収を行っていない数が増えているということだ。競売対象が増加しない背景を表している。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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