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東京競売ウォッチ

2013年4月2日

第175回 アベノミクス効果が鮮明に

 株高の勢いは止まらず、アベノミクス効果が鮮明になりつつある。そんな中、不動産市場にも、その影響が及びはじめ、一部地価上昇の話が聞こえてきている。

 さて、地価上昇の波は、果たして中古マンションに及ぶのであろうか。これについて、再販業者の多くは、住宅ローン金利の低下などもプラス材料と考え、価格上昇を予想しているようだ。これを裏付けるかのように、中古マンションの落札価格の売却基準価額への上乗せ率が上昇している。

 ちなみに、3月5日開札においての競落マンション全ての上乗せ率の平均値は78.72%となっており、これは昨年2012年通年平均値41.24%を36ポイント以上、大幅に上回る。

 その中で、この日、最も大きな上乗せ率を記録したのが、都営浅草線「蔵前」駅徒歩約4分に立地した、専有面積約6坪の3DKの部屋である。この物件の売却基準価額は647万円であったが、これに対し41本の入札が集まり、最高価1,660万円強で業者が落札していった。この落札価格の上乗せ率は156%強にもなる。

 この物件は築年が30年を超えているところから、水周り他の専有部分内の設備の入れ替えなどは行わなければ、商品化ができないように思う。さらに、今あまり人気のない和室も含まれているところから、間取り変更のコストも考えられる。それでも先の競落価格である。この競落価格でも採算が合うとの競落者の判断は、現下の情勢が反映されていよう。

 ただ、この物件はぎりぎり新耐震基準のマンションであったが、この日は代々木の昭和54年築の旧耐震基準マンションも50%を超える高上乗せ率で競落されている。

 いよいよアベノミクスが中古マンション競落競争を過熱化してきたようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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