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東京競売ウォッチ

2013年5月14日

第180回 早稲田のマンションに入札70本

 競売市場においてのアベノミクス効果は、築浅都心型マンションから顕著になっていると言える。昨年の衆議院選挙以降、マンションへの競落価格の売却基準価額に対する上乗せ率が急上昇してきているが、4月11日に、その状況を象徴するような競落事例があった。

 その物件は地下鉄東西線「早稲田」駅徒歩約5分に立地する1K、専有面積約9坪のマンションであった。この物件に対し入った入札本数は70本に上り、上乗せ率は140%強という高さであった。

 売却基準価額が756万円と低く設定されたこともあろうが、競落価格の1,815万円では専有面積1坪単価は200万円を超えることになる。これでは、おそらくは、賃貸した場合でも実質利回りは年7%足らずであろう。

 この物件、築13.5年と比較的新しく、かつ空室であって、明渡しに関するコストもかからないということが、大量入札に結び付いた一因とも考えられるが、それにしても高い落札水準である。

 ただ競落したのは個人であった。個人投資家のエンド価格とすれば、確かに理解はできる。

 ちなみに、入札本数70本を超えるのは、一昨年2011年11月、墨田区押上のマンションに83本の入札があって以来のことである。

 この日、やはり上乗せ率が100%(つまり売却基準価額の2倍)を超えるマンションが他にもう1つあったが、これも1Kの部屋で、こちらは築5年とさらに新しい。京浜急行線「京急蒲田」駅徒歩約4分と至便な立地であった。

 こういった投資用マンションがどこまで価格を伸ばしていくのか、注目である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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