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東京競売ウォッチ

2014年10月21日

第251回 門前仲町の土地に入札109本

 競売市場が過熱している大きな要因は、不動産売買を主業とする会社の仕入れ競争の激化にあるように思う。不動産流通機構のデータを見てみると、今年の春以降マンション、一戸建て、土地ともに流通量が減少している。

 これは、不動産需要が少なくなっているというよりは、不動産所有者の売却処分件数が減じていることによるのではないだろうか。東京圏に関すれば、オリンピック招致による先高感、もしくは値下がりリスク低下がその背景にあると思われる。不動産売買業をメインとする会社は仕入れが難しくなるのである。

 9月25日開札では本欄開始後、おそらくは最高の入札本数である109本を記録した物件がある。その物件は東京メトロ東西線「門前仲町」駅徒歩約4分に立地する古家付の土地。南東側と北東側で各々幅員約8mの公道に面する角地で、広さは約19坪である。売却基準価額が1,051万円であったが、路線価での計算上、地価約1,800万円の45%引きである。かなりの低額であると感じたので、評価書を見てみた。すると評価書上の正常価格は2,100万円強であり、特段割安ではないが、土地上の建物の朽廃がかない進んでいるとの見方から、その分の市場修正を3割行っているのである。

 つまり、正常価格に対し、競売市場修正の3割減額を合わせて51%の減額を施していることになる。結果として前述の売却基準価額となった。

 かなり安い感じがする価額ではあるが、それにしても競落価格は何と売却基準価額の4.1倍を超える4,368万円弱であった。これは路線価評価に対しても2.4倍を超えている。

 落札者は不動産会社であると思われるが、100万円強差の次順位入札もあることから、マーケットから、かけ離れた価格での競落ではないのだろう。競落競争の過熱ぶりを表す事例である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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