リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2026年06月23日

第796回 M&A詐欺?の果ての競売か

 昨今テレビでよく見かけるのが会社のM&A仲介会社のCMである。昨今多くの中小企業が経営者の高齢化や、事業モデルの陳腐化などで業績不振に陥り、経営者が会社売却を検討している。中小企業経営者としては銀行等からの借り入れについての経営者個人保証は事業承継に大きな障害になる。

 そこで言葉巧みにそういった中小企業経営者にM&A仲介会社を通じ、そのような経営者の不安を解消するとして企業買収の契約を締結させる。その上で買収された会社が保有する現預金をまずは買収した会社に引き上げ、その上旧経営者の借り入れの個人保証を外す約束は違えるのである。売り手の会社は倒産を余儀なくされ、買い手会社は連絡がつかず資金の回収も不可能となる。まさに売り手会社にとって踏んだり蹴ったりの話である。

 6月3日開札では、東武伊勢崎線「竹ノ塚」駅徒歩約6分に立地する事務所ビルが対象になった。この物件の所有会社がまさにこのM&A被害会社であり、結果的に本社ビルが競売になったのである。土地は約82坪、建物は鉄骨造の延床面積約99坪で売却基準価額は1億4451万円であった。これに対し入札は3本あり、最高価1億7340万円で競落された。

 この物件の抵当権設定内容を見ると債務は2億8000万円以上あるとも見られるので、場合によって債権者の未回収債権は所有会社経営者個人への請求がなされるかもしれない。このM&Aの買い手はルシアン社と言い、複数の会社に被害を与えているようだ。現在M&Aの法整備が急がれる事態となっている一つの発端とも言える事象である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.