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東京競売ウォッチ

2025年09月30日

第762回 滞納管理費等の見込み違いか

 競売マンションにおいて特有のコストとして滞納管理費・修繕積立金がある。時には売却基準価額以上の金額となっているものがある。従前所有者の滞納管理費等は区分所有法に基づき競落した者に競落後管理組合から請求されることになるので入札者はその金額をコストとして捉え、入札金額を決定しなければならない。

 9月10日開札で東急田園都市線「三軒茶屋」駅徒歩約11分に立地する築41年で専有面積約4.4坪のワンルームマンションが対象となった。このマンションの売却基準価額は114万円と極端に安い印象であったが、その要因が滞納管理費等である。現況調査報告書によればこの部屋の管理費等の滞納金は2021年8月から2025年2月まで38ヶ月分で約102万円と記されている。そしてこれに加え年利14%の遅延損害金約660万円が未納で併せて760万円強が管理組合の区分所有者に対し有する債権額とされている。

 この物件の売却基準価額を算出するにあたっては、評価書においてこの物件の市場正常価格を約1100万円とし、競売による減価20%を考慮した値から競落者が競落後負うとする約760万円を差し引くという方法を取っている。

 ここで疑問なのが滞納管理費等100万円強に対し遅延損害金約660万円となっているのは何故なのか、いかなる計算方法なのか、ということである。考えられるのは、2021年8月以前に多額の滞納があったため遅延損害金が累積していたということであろうか。累積した遅延損害金を支払わず滞納管理費等だけを過去支払ったのということかもしれない。

 入札結果は8本の応札で最高価1300万円強にて個人が落札した。ただこの落札金額は多額の遅延損害金を考慮していないのではないか。そうでなければ良いかとは思うが、もし考慮していなかったというのであれば、管理組合にはこの遅延損害金計算根拠を請求すべきではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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