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東京競売ウォッチ

2011年5月23日

第91回買受人が負担する権利

 競売物件で買受人が取得後に引き受ける権利がある場合がある。1番代表的なものは、抵当権設定以前からの賃借権である。

 この場合、物件明細書中の「買受人が負担する他人の権利」の欄に記載されることになる。賃借権が引き受けになれば、賃借人が所有者に預けていた敷金や保証金についての返還義務が買受人に承継されることになる。

 ところで、4月26日開札において「買受人が負担する他人の権利」欄に保証金返還請求権を対象債権とする留置権と記載されているものがあり、目を引かれた。その物件は京王井の頭線「神泉」駅徒歩約7分に立地するマンション(築29年)の中の1階の区分所有店舗である。

 事件記録を見てみると、この店舗を占有するテナントは抵当権設定前からの賃借権者であったが、所有者から転貸をしたとして、契約違反による解除を請求されたこと、そして、その結果、裁判によって保証金の返還と引き換えに建物を返すよう命ずる判決(明渡しに関する引渡給付の確定判決)がなされたことが記されていた。

 ということで、買受人は賃借権を引き受けるのではなく、保証金の返還請求権を引き受ける形となったようだ。この物件は昨年11月25日開札物件として1回競売に付されたが、このとき留置権の引き受けが考慮されていなかったとして入札期間が変更になった。今回、この点が修正され、入札が行われたのである。

 この物件の売却基準価額は1,333万円であったが、入札7本が入り、結果は最高価3,621万円にて個人が落札していった。

 こういった物件の入札者は収益物件取得が目的であり、安定した賃貸運用ができれば良いのであるから、1等地のマンション1階店舗は魅力的であったのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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