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東京競売ウォッチ

2017年1月17日

第353回 駅至近希少物件の高額落札

 昨年11月8日、小田急小田原線「祖師谷大蔵」駅至近の1.1坪の狭小区分店舗が売却基準価額の4.5倍で落札され、驚かされた。駅至近希少立地物件の人気を再確認したが、昨年最後の12月22日開札でも駅至近物件に高額落札があった。しかも、こちらは築古の借地権付建物(ビル)であった。

 その物件は東京メトロ「仲御徒町」駅の出口至近に立地し、借地権面積約13坪で、昭和通りに面している。建物は老朽化著しく、取り壊しが前提と考えられる。この物件の売却基準価額は2,888万円であったが、これに対し21本の入札があり、最高価7,013万円強にて落札されていった。借地権にもかかわらず、売却基準価額の2.4倍を超える落札水準なので驚かされた。

 借地権付建物の場合、賃借権の譲渡承諾を地主から得なければならない。地主がこれに応じない場合、競落者は「借地権譲受許可」を裁判所に申し立てることになる。その場合、地主は「介入権」という権利を行使して、借地権を鑑定評価額で買入れることが可能である。

 したがって、競売の評価を大幅に上回って落札すると、結果として地主に安く買われてしまい、損害を被ることもある。本件はおそらく競落者が地主から底地を買収できる公算が大きいので、こういった入札価格だったと思われる。しかし、やはり駅近希少物件は一段高い値打ちがある。

 今年も希少立地物件への大幅上乗せ落札事例が登場するように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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