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東京競売ウォッチ

2014年8月12日

第242回 一棟収益不動産の売り出し価格が上昇

 収益不動産、とくに一棟物の市場の物件売り出し価格がかなり上昇(利回りは低下)している。

 7月24日開札では、西武新宿線「井荻」駅徒歩約1分の店舗・事務所・共同住宅の一棟物件に41本もの入札があり目を引かれた。

 この物件、5階建てで、1階は店舗、2階と5階が事務所、そのほかは1Kの住居が10戸からなっている。土地は南側で幅員7m強、東側で幅員約5.5mのそれぞれ公道に面する角地で、面積は約62坪ある。

 建物は鉄骨造の築20年であり、延床面積は約200坪である。この建物から得られる賃料収入は、年約1,700万円程度と見込まれ、固定資産税等他維持管理費用を控除すると年1,500万円程度が純収入であろう。

 そんな条件で、この物件の売却基準価額は1億20万円であったが、競落したのは不動産会社らしく、競落価格は1億9,066万円弱であった。競落価格ベースでの期待利回りを考えると、収益利回りは、表面で年9%弱、ネットで8%弱といったところである。

 おそらく再販時には利益・経費等が上乗せされ、売り出し価格2億5,000万円程度に設定されるだろう。これはネット利回り年6%水準である。

 ちなみに、この物件は積算価格が2億円には届かず、建物が鉄骨造であることもあって、銀行ローンは1億5,000万円程度しか利用できないだろう。したがって、再販時に買える個人投資家は、潤沢な自己資金を要するのではないだろうか。

 また、相続税対策などの税メリットの享受を目的とした購入者が期待できる再販先になるとも思われる。一棟収益不動産が高い市況がよく分かる競落結果であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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