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東京競売ウォッチ

2013年12月17日

第210回 1万円の売却基準価額

 11月19日では競落1物件あたり13.65本の入札と、高水準を続けている。この日、開札対象49物件のうち、特別売却に回ったのは、わずか1物件であった。しかし、その物件も特別売却期間中に入札があったので、実質完売であった。

 このように競売市場が過熱とも言うべき状況にある中、平成22年から繰り返し開札対象になりながら、決着がついていない物件もある。それは11月19日開札となった西武池袋線「桜台」駅徒歩約5分に立地する築38年のワンルームマンションである。専有面積6坪強のこの物件の売却基準価額は1万円である。

 競売マンションの中には滞納管理費等が多額であるがため、計算上売却基準価額がマイナスになってしまうことがある。そういった場合評価額としては最低の1万円に設定されるのである。このワンルームマンションもこのケースにあたる。

 この物件、遡ると昨年(平成24年)12月20日に入札11本を集め、最高価577万円で競落されたが、代金不納付で再入札となった。そして今年(平成25年)6月13日にやはり入札11本を集め、最高価722万円にて競落されたが、このときも再び代金不納付となり、今回の開札を迎えたのである。

 そして今回、偶然にも入札本数はまた過去と同じ11本で、最高価689万円にて競落されていった。滞納管理費等は遅延損害金を含め500万円以上存するので、取得コストは1,200万円程度となるが、これでも応札があった。

 ただ今回も代金納付されるかどうかは不透明だろう。というのも、売却基準価額が1万円では、入札保証金は2,000円に過ぎない。競落者は取りあえず、競落した後で、管理組合と交渉し、滞納管理費等の負担額について交渉し、減額ができないなら、わずかな入札保証金を放棄する考えである公算が強いのである。

 1万円の売却基準価額では、このように競売が決着しない現象が起こりうる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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