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東京競売ウォッチ

2012年5月29日

第137回 係争物件扱いのマンション

 東京スカイツリーの開業が間近となり、近隣地域も活性化に期待している。先の地価公示価格の発表においても、スカイツリーのお膝元である墨田区押上地点で地価上昇が見られた。スカイツリー効果は隅田川を挟んだ浅草地区にも及ぼしているようだ。

 4月26日開札で、地下鉄銀座線「浅草」駅徒歩約2分に立地する、専有面積約14坪で、2DKのマンションに12本の入札が集まった。入札本数としては、目立って多いという感じではないが、実はこのマンション昭和39年築と、かなり古い分譲マンションである。しかも、このマンションの敷地権が地上権なのであるが、この地上権について、地主が存在を否認しているのである。

 地主は現在複数存在しているが、そのうちの1人の主張は、あくまで分譲マンションについては地上権ではなく、「空中権」を与えているにすぎないということである。現状、地代をこのマンションの分譲部分の区分所有者は地主に支払っているものの、それは、地主としては空中権の使用対価として受領しているとのことである。

 ところで、地上権が存在しないとなれば、借地借家法の適用がないので、地主としては、建物の収去を建物所有者に請求できるはずである。

 しかし、現実的にはこういった多数の区分所有者が存する建物について取り壊すことは現実的には不可能であろう。地主もそこのところは理解しているようであるが、係争物件扱いには違いない。評価書上では、5%ほどの係争減価は施している。

 築年が古いこともあって、いずれにしろ銀行融資の対象にはなりにくかろう。しかしながら、スカイツリー効果での賃借ニーズが期待できるとの考えか、売却基準価額274万円に対し、その2.5倍を超える、最高価697万円弱で競落されていったのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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