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東京競売ウォッチ

2009年8月3日

第3回 上半期の競落データから見る傾向

 今回は今年上半期を集計データから振り返ってみたい。別表は弊社で作成した半期ごとの過去3半期の競落データである。この表を見ると、昨年下半期からの対象物件数の大幅な増加の様子がわかる。

<開札結果 対比(平成20年~21年)>
20年上期20年下期21年上期
対象物件数8141,1481,584
総入札数5,5855,40610,768
落札物件数7631,0081,323
落札率93.7%87.8%83.5%
10本以上217149388
落札1物件の入札数7.315.368.13


 また落札率においては、今年上半期が一番低い数字になっているが、入札10本以上の物件数は一番多く、その発生割合も20年上半期並みである。そして先週も紹介したとおり、落札1物件に対する入札本数の割合が今年上半期はリーマンショック前の昨年上半期を凌いでいる。築浅マンションに集中的に入札が集まったことが、こういった数字に表れた。

 今年上半期、最多の入札は6月4日開札での大江戸線「新江古田」駅徒歩1分のマンションに対する72本であったが、これは6年近くぶりの大量入札であった。

 マンション入札過熱とも言える状況だが、一方で金額が大きい高級住宅地や商業地などは、それに比べると勢いはなかった。5月26日開札では小田急線「成城学園前」駅徒歩4分の一戸建て(土地36坪)が、売却基準価額を下回り、おおよそ路線価並みの土地価格で落札されており、入札本数も9本と1ケタであった。また6月30日開札では、地下鉄銀座線「青山一丁目」駅徒歩3分の約80坪の商業地が路線価の1.2倍程度の水準で個人が落札していった。入札本数は5本にとどまっている。

 ともに1年以上前であれば、大量入札間違いなしの物件であったと思われる。こういった物件の今後の入札動向が注目される。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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