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東京競売ウォッチ

2017年8月22日

第381回 売却基準額1万円のマンションが960万円超で落札

 昨今、空き家問題が世間を騒がせている。一戸建てだけではなく、マンションにおいても空室のまま放置されてしまうケースもある。空室放置マンションは同マンション内の他の区分所有者に対する迷惑もさることながら、周囲の環境にも影響がある。8月3日開札で開札対象となったのが、まさに空室放置部屋である。

 その物件は東京メトロ丸ノ内線「新高円寺」駅徒歩約3分に立地する。築43年経過した古いマンションの4階に位置するその部屋は、事務所仕様で、専有面積は約10坪である。この部屋は放置されて相当の年月が経過していると思われ、バルコニーには鳩が生息、部屋を自由に出入りし、ゴキブリの死骸も散見されるありさまである。しかも滞納管理費は350万円超、他に遅延損害金などの負担が約530万円もある状態であった。

 結局売却基準価額は最低の1万円に設定されていた。(評価書では、滞納管理費や遅延損害金などでマイナス評価になってしまうことから1万円に設定)そして結果として入札は13本あり、最高価960万円強にて業者が落札していった。

 実はこの物件今年3月9日に1回落札されていて、その時は入札が12本で、競落価格は1590万円であった。しかし競落者は代金を納付せず、再び入札が行われた。売却基準価額が1万円であると、入札保証金は2000円であるので、代金不納付による損害は軽微で、取りあえずの入札が生じやすく、簡単に不納付が起こってしまう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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