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東京競売ウォッチ

2016年9月27日

第340回 後楽園の築60年超の一戸建て

 1カ月以上の間隔が空いた9月8日開札は、前回に続き100%競落であった。その中にあり、高額物件での約190%の上乗せ率での競落に目を引かれた。

 その物件は、東京メトロ南北線「後楽園」駅徒歩約2分の一戸建てであった。ただし、建物は築60年を超える古屋である。したがって売却基準価額は6,974万円であるが、おおよそが土地の価値ということになる。

 その土地は東側で幅員約4mの公道に約17m面する約95坪の整形地である。この土地の相続税路線価は坪155万円であるので、相続税評価額は1億4,700万円超である。しかし、この物件の売却基準価額は先に記したとおり、その半分以下の6,974万円である。なぜこんなに低額の設定になっているのか、疑問に思われる。そこで評価書を見ると、評価手法で収益還元による価格を算出していて、それが2,544万円であることが主因であった。この収益還元価格と積算価格1億4,000万円超との間を取ったため、結果としてこのような低額設定になったようだ。

 確かに月額20万円で対象建物は賃貸されていて、しかもその賃借権は最先の賃借権である。したがって、その借家権を考慮する意味合いもあって収益価格を算出したと思われる。

 結果としては競落価格2億200万円弱の大幅上乗せの競落であった。競落会社としては賃借人の明渡しの示談コストを考慮しても、2億円超でも採算が合うとの判断であったのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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