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東京競売ウォッチ

2014年6月10日

第233回 東長崎駅の区分所有事務所

 売却率100%が珍しくない状態の東京地裁であるが、その中で入札が1本で、競落価格が売却基準価額を下回る物件があった。

 その物件は西武池袋線「東長崎」駅徒歩約4分に立地する区分所有事務所(実際は「作業所」)である。築24年を経過したマンションの1階に位置し、専有面積は約26坪である。月額20万円の賃料で賃借人が占有中である。

 この物件の売却基準価額は1,417万円であったが、これに対し、入札は1本で、落札価格は1,232万円であった。この物件の現在の収入は、管理費等や固定資産税等を考慮すると年約170万円ほどであるので、競落の水準は滞納管理費負担を考えても年利回り13%を超える。昨今の不動産市場を考えると、かなり高利回りに思えるが、入札はわずか1本であった。

 入札が少なかったのは、おそらくは現在の利用状況が特殊であること、また、部屋の形状が細長く、将来のテナント確保にリスクがあることなどであろう。

 一方、好立地のマンション(住居用)で新耐震基準建設でありながら、入札2本で、売却基準価額を少し上回る程度で落札された物件があった。

 入札が集まらなかった理由は、管理が自主管理で、管理費会計などが曖昧な状況でありそうなところがまず考えられる。また、本マンションの敷地の権利は借地で、契約の期限が3年後と近い。契約更新にあたり、更新料などの条件についても、現在のところ不明である。さらには地主(寺)への地代について、各部屋の負担額が明確でない。

 こういったマンションは再販するときに、とくにローン利用の際にはハンデを負うことになる。そういったことを見越したところで、買取り業者が入札を敬遠し、入札本数が少なかったのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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