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東京競売ウォッチ

2014年8月5日

第241回 敷地利用権のない建物の敷地

 競売不動産には、一般市場に見られない不動産が散見される。その例として、共有持分の売却物件がある。

 7月10日開札において、一戸建ての敷地の共有持分が競売対象になった。その物件は東武東上線「東武練馬」駅徒歩約18分に立地し、対象の土地は南西側で幅員約8mの公道に面する約30坪で、その上に築約34年の木造3階建て、延床面積約47坪の建物が建っている。

 競売対象は、その土地の共有持分2分の1である。ちなみに建物については、土地の利用権がない。抵当権の実行の競売であると、こういったケースでは建物に法定地上権が成立することが多い。しかし、本件は抵当権などの担保権実行でない競売(ヌ事件)であることもあり、建物に敷地に対する利用権は認められていない。

 敷地利用権のない建物の敷地を買い受けた場合、競落者は建物について収去(取り壊して更地に戻すこと)を請求できる。ところが本件の場合、土地の2分の1の共有持分しか取得できないので、建物所有者に収去を請求できないと思われる。したがって、本件の競落者は自らが競落した共有持分を土地共有者(もしくは建物所有者)に買い取ってもらうか、第三者に全体を一緒に売却するなどして資金回収を図ることを考える公算が高い。しかし、そういったことは相手の合意があって始まる話であるので、交渉が纏まらないことは大いに有り得る。

 そこで、競落者が取り得る法的手段が「共有物分割請求訴訟」である。土地を分割するよう相手の共有者に求めるのである。この場合で、相手が分割に応じない場合は、全体を競売に付せる可能性もある。手間はかかるが、資金回収の途はあるのである。

 ということで本件にも6本もの入札があり、売却基準価額641万円のところ、最高価1,055万円にて競落されていった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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