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東京競売ウォッチ

2016年10月18日

第343回 競売で取得の障害となる明渡

 競売不動産で一番通常不動産と異なり、取得の障害となるのは明渡である。競落者が自ら占有者と交渉して占有を確保しなければならない。ただし、占有権原が競落者に対抗できない場合、競落者は裁判所に当該占有者に対し、引渡命令を申し立てることができる。引渡命令が発令されれば、任意の明渡交渉が成立しないとき、明渡の強制執行を行うことができる。

 9月27日開札で、JR常磐線「亀有」駅徒歩約8分に立地する店舗兼居宅が対象になった。16坪の敷地上に築約40年の3階建ての建物がある。1階が店舗、2階が倉庫、そして3階が居宅になっている。売却基準価額1,085万円のところ入札12本で、1,867万円で競落された。

 この物件、現在は店舗の営業はされておらず、3階に債務者の妻が居住している。おそらくこの妻は夫が債務超過であったことから当該対象建物を相続せずに、そのまま占有しているものと思われる。

 そして、債権者の申立てにて選任されたと思われる相続財産管理人が、この妻を不法占有と看做している。一方、占有者の陳述によれば、高齢であり、行く先のあてもないので、このまま賃料を支払ってもよいから居住したいとのことである。しかし、この占有者は競落人に占有権原が対抗できない。よって競落者は先の引渡命令を申し立てしてでも明渡を迫ると思われる。

 高齢化社会が進む中、こういったケースが増加していくように思われる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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