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東京競売ウォッチ

2020年11月3日

第525回 久々の1棟物に超高水準入札!!

 先週は間取りが確認できないマンションであっても大量入札になった浅草のマンションのことを紹介した。これは中古マンションの相場の堅調さを表したものだが、一方で収益物件はどうであろう。

 10月7日開札では田園調布の鉄筋コンクリート造5階建ての賃貸マンション一棟が対象になった。所在は田園調布でも1丁目で、最寄り駅は東急東横線「多摩川」駅である。徒歩約4分と賃貸マンションとして有利であり、築26年と30年以内であるのも条件として良い。

 間取りは1DK、1Kが23戸、賃貸収入はおおよそ月額200万円というところである。敷地は約111坪あり北西側で幅員7mの公道に面している。売却基準価額は2億125万円であったが、これに対し入札は16本あり最高価6億5270万円で法人が落札していった。

 この落札水準であると、運営諸経費を差し引いて考えれば年利回りが3%にも届かない計算になることで、かなり高額の競落であった。売却基準価額の3倍を超えることもあり、所有者の関係者など何らかの特別事情があっての競落であろうと想像される。一般に売り出しても到底そこまでの売却価格にはならないだろう。

 ただこの物件23戸の区分所有登記になっているので場合によると、分譲を視野に入れての入札かもしれない。それでも1戸あたり3000万円近くになってしまい、販売は簡単ではないだろう。本競落例では収益物件の市場は占えないように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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