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2023年11月21日

第675回 マンション新相続税評価額の影響度

 来年1月1日からマンションの相続税評価方法が大きく変わる。一般的にはタワーマンションの相続税節税効果を抑える目的と言われるが、変更されるのはマンション全体についてである。11月8日に競落された2つの1Rマンションで新相続税評価額が従来とどれだけ違うか検証した。まず一つ目は港区南麻布所在の築20年の専有面積約6坪のマンション。12階建ての12階に位置する。このマンションの売却基準価額は1450万円であったが、2255万円で個人が落札した。さて弊社の試算では本年までの相続税評価額は約870万円であるが、新相続税評価額ではその1.55倍の1355万円で、相続税評価額圧縮金額は約485万円減少する。新評価額では競落価格に対して約6割に相当する水準で、現行より2割以上評価減の効果が少なくなる計算だ。これに対しもう一方、この日板橋区前野町に所在する築34年の専有面積約5坪の1Rが売却基準価額664万円に対し671万円で落札された。このマンションについての弊社の試算では現行の評価額は約435万円だが、新評価額では約444万円となり、ほとんど変わらない。そして競落価格に対しては約7割弱の評価水準であり、先の港区のマンションに比して1割弱高いが、ほぼ同様の相続税評価の圧縮効果と言いえるだろう。

 この2つの競落されたマンションを見ると、明らかに都心立地で築浅マンションに対して評価額のかさ上げが行われることが分かる。複雑な計算方法ではあるが、都心マンションの節税効果を狙い撃ちする形の巧みな改正と言えそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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