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東京競売ウォッチ

2021年11月9日

第576回 湾岸タワー市場相場並み落札!!

 先週はマンションの積算価格が市場相場に対し、かなり低くなることを記した。それはマンションの価格形成が、取引事例に基づくからであるが、裁判所の評価額もそれをくみ取り評価額を修正するケースもある。

 10月20日開札では中央区晴海3丁目にある「ベイシティ晴海スカイリンクタワー」の専有面積約25坪の部屋が対象になった。このマンションは築後12年を経過している。この物件の評価書では積算価格として正常市場価格を約5300万としている。これは専有面積坪単価で約212万円の水準である。

 ちなみに同棟内の別の部屋が専有面積坪単価で350万円を超えで、つい1か月前に成約しており実際の取引価格とかなり乖離している感がある。こんな取引事情を幾分反映させるためか評価書では市場補正ということで1.2倍にしている。それで算出された価格に収益還元価格を勘案して最終的に6000万円を市場価格としている。

 これに競売市場修正として20%を減じられ、その結果4832万円が売却基準価額に設定された。入札はこの開札日一番の37本が応札され、最高価9100万円強にて法人に落札された。この落札水準は専有面積坪単価360万円強で、ほぼ市場価格である。

 ちなみにこの物件は所有者が空室で占有している状況である。競落者は明渡に苦労が無さそうであることで、あらかじめ特定の実需購入者を決めた上で入札したのではないだろうか。突出した競落価格で次順位となる入札者が無かったことからも、そう推察される。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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