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東京競売ウォッチ

2015年6月30日

第282回 八丁堀15坪の5階建て小規模ビル

 収益不動産、わけても都心立地の手頃な価格帯の物件は品薄になっている市況である。1棟物件で1億円程度のものはほとんど見当たらない。そんな状況を反映した競落物件が6月4日にあった。

 その物件は東京メトロ日比谷線「八丁堀」駅徒歩約3分に立地する築23年が経過する鉄骨造5階建て小規模ビルである。

 土地は約15.5坪で、西側で幅員11mの公道に約14m面し、南側では幅員15mの大通りに約3m面する。さらに北側は幅員4m未満の2項道路に約3m面するという細長い変形地形の土地である。建物は延床面積が約106坪、1階が立ち食い蕎麦店で、2階から5階までが住居となっている。

 ビル全体の月額収入は約60万円で、年収700万円程度と見られるが、売却基準価額は3,954万円になっていた。これに対し入札はこの開札日最高の65本入り、最高価1億483万円にて競落されていった。売却基準価額の2.65倍の水準である。

 ちなみに、この物件の評価書の積算価格は5,667万円とある。その内訳は土地が1坪当たり約230万円の3,630万円で、建物が約2,040万円(床面積1坪あたり約20万円)の評価になっている。

 今回の競落水準を見てみると、土地が約8,400万円相当にあたり、評価書の積算価格に比して約2.3倍である。一方、競落価格の収益利回りを見ると、表面で年約6.6%になる。これは固定資産税等や、維持管理コスト控除後、実質年5%強程度と思われる。

 鉄骨造で変形地という欠点が無ければ、さらに高い水準の競落になったであろう。収益不動産人気沸騰である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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