リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2012年8月28日

第149回 堅調な個人投資家向け需要

 低金利が続き、また株式市場も軟調な状況にあり、個人資産の運用には多くの人々が迷っている昨今であるが、その中で、個人投資家向けの収益不動産に対しては堅調な需要があるようだ。

 競売市場においても、最近ワンルームマンションへの入札、とくに築年が浅い物件については入札が増加しているように感じる。

 7月31日開札では、地下鉄丸ノ内線「茗荷谷」駅徒歩約4分に立地し、専有面積約6.4坪で、築10年弱の部屋が一番人気であった。この部屋は法人の社宅として賃貸中であり、年収105.6万円である。管理費等や固定資産税等を差し引いた実質年収入は92万円強である。

 この条件で、売却基準価額は702万円であったが、これに対し、31本の入札が集まり、100%近い上乗せ率であるところの最高価1,388万円にて落札されていった。滞納管理費が45万円ほどあるので、実質年利回りは6.5%程度の落札水準となる。中古物件としては高い利回りとは思えない。

 しかし、ワンルームマンションへの人気は、地域や条件によって大いに差がある。この差についても、このところ拡大傾向にあるように思う。

 同じ開札日にJR常磐線「三河島」駅徒歩約5分に立地する、築4年強の専有面積7坪強のワンルームマンションには、わずか3本の入札しかなかった。競落価格も売却基準価額714万円に対し、10%以下の上乗せの779万円であった。格差拡大の事例と言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.