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東京競売ウォッチ

2013年4月30日

第179回 足回りの悪い借地物件

 4月11日開札では、競落1物件に対する入札本数は約12.8本であり、これは昨年2012年1年間の平均約9.5本の約1.35倍の水準である。

 競売市場は確実に過熱化してきている。その中でこの日、昨年9月20日に応札がなく、不落札で特別売却に回るも、それでも応札がなく、今回対象となった物件に目引かれた。

 その物件は、東武伊勢崎線「梅島」駅から約1.7kmの位置にある借地権付建物であった。土地は北東側で幅員約5.5mの公道に面する約39坪の借地であり、建物は築約18年の鉄骨造3階建て、延床面積は約83坪ある。

 借地の契約期間は30年で、残存期間は11年弱、地代は月額19,400円である。この地代は1カ月1坪あたり510円強なので、ほぼ相場に準拠していると思われる。この内容でこの物件の売却基準価額は1,448万円である。これは昨年の売却基準価額2,068万円から3割低い設定である。

 そして、結果は入札が2本で、最高価は1,210万円であった。競落水準が上がる中で、売却基準価額を下回る落札価格である。しかも昨年不落札で、3割もの価格修正をかけているのだ。

 この物件落札者の総取得コストは、地主への名義変更料その他を含め1,500万円程度であろう。したがって、建物(約83坪)を割安の月額20万円で貸したとしても、年約14%強の利回りが得られ、かなり割安な落札価格に感じる。足回りの悪い借地物件には資産インフレは起きていないようである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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