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東京競売ウォッチ

2024年01月30日

第683回 バス便が売却基準価額未満で競落

 24年の最初の開札は1月17日であった。この最初の開札から昨年の流れそのままに100%競落であった。ただその中で売却基準価額を1割以上下回り競落されたマンションに目を引かれた。その物件はJR常磐線「金町」駅の北方約2.7㎞に立地する。バス便はあるが、約12分乗車の上、到着の最寄りのバス停からは徒歩約5分である。かなり足回りは悪いが、都内最大規模の水元公園から徒歩約4分と環境は良い。

 対象となったマンションはダイア建設分譲で築22年弱、専有面積が約23坪の3LDKの部屋である。占有者は6か月猶予で明渡可能であり、滞納管理費は10万円未満である。

 この内容で売却基準価額が1719万円であったが、これに対し入札は3本に止まり、最高価1535万円にて再販業者が競落していった。新耐震基準建設で準大手分譲のファミリーマンションが売却基準価額を10%以上下回って競落されるのは珍しい。ちなみに昨年の同マンションの成約事例を見てみると、その成約事例と同じ水準だとすれば約2100万円程度の再販価格が見込まれる。そうであれば売却基準価額程度の入札はありそうなものである。しかし、立地がかなり不便であることや、対象住戸が1階に存することから、入札価格は売却基準額を下回ったようだ。

 都心部の駅近マンションでは過去の成約事例を凌駕して再販価格を見込み、入札価格を設定するケースが多いのと対照的な競落結果であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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