リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2016年2月23日

第311回 芝浦のタワーマンション

 先日、タワーマンション購入を利用しての相続税節税を制限するとの報道が日経新聞他メディアに取り上げられた。マンションの相続評価は競売でも同じであるが、階高や住戸位置(角部屋か否か、リビングが面する方角がどちらかなど)は考慮されることない。あくまでも住戸に付帯する土地持分の評価と、建物の物理的な評価をベースとしている(なお東京地裁では、収益還元価額も参考にするが、いずれにしろ住戸個別条件は反映されにくい)。

 そこで今般、住戸条件の良い部屋に対しては、その相続評価額を通常の方法で算出されたものに積み増し評価するというのである。

 1月21日開札では、港区芝浦のタワーマンション(JR山手線「田町」駅徒歩約8分、名称「キャピタルマークタワー」)が競落された。対象の住戸は専有面積約38坪の2LDKだが、47階建ての42階部分であるので、まさに公的評価額より割高で流通する、相続対策向きの部屋と言えよう。

 さてこの物件、売却基準価額7,451万円のところ、25本の入札があり、最高価格1億3,000万円にて落札されていった。専有面積1坪あたり342万円の水準である。ちなみに、この物件は2005年に分譲され、2007年10月に竣工しているが、分譲当時の専有面積坪単価は平均で220万円台であった。先の競落対象住戸は平均坪単価より高い住戸であると思われるが、それでも分譲当時からすれば2割以上値上がりしているだろう。

 こういった値上がりしたタワーマンションの相続税評価は、先の改正がなされた場合、どのようになされるのであろうか。積み増し評価も今後、具体的な決め方については種々問題が出てきそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber

コラム一覧

山田純男 東京競売ウォッチ

2024年05月14日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.