リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2014年4月22日

第227回 借地権付物件の商品化

 売却率100%が続く東京地裁競売市場であるが、そんな中でも、競落価格が売却基準価額を下回り、入札本数も1本のみという物件もある。そういう物件は借地権付建物であることが多い。

 3月25日開札で京成本線「堀切菖蒲園」駅徒歩約4分に立地する借地権付建物が開札になった。土地は幅員4m未満の私道をはじめ3本の道路に面し、約150坪ある。建物は、廃屋とも言うべき工場などで、ゴム、プラスチックなどを扱っていたようで、土壌汚染リスクが高いようだ。評価書においてもこの点が考慮され、減価されている。

 この物件の売却基準価額は2,816万円であったが、これに対し、入札は1本のみで、競落価格は2,460万円であった。

 借地物件は、賃借人の名義変更について地主の承諾が必要であるのはもちろんである。ただし、この物件に関してはさらに大きな広さだけに、敷地の分割も地主にお願いしないと商品化が難しいという問題もある。

 加えて建物再築に関しても許可を要する。つまり地主の許可次第で価値が決まると言っても過言ではない。

 結果として売却基準価額以下の応札しかなかった。

 逆に借地物件でも、建物が既存のものが十分使用できるものであれば、多くの入札を集める場合もある。

 2月13日開札では、JR総武線「新小岩」駅徒歩約9分に立地する敷地22坪弱で、床面積70坪強のテナントビルが借地権付建物であったが、15本の入札を集めた。競落価格も売却基準価額1,386万円に対し、90%超上乗せの2,648万円である。

 ただしこの物件、地主が不動産会社であり、土地の売却にも応ずる見込みが高いということも、大量入札の背景にあっただろう。

 借地権付物件の商品化は地主の属性によるところも大きい。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.