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東京競売ウォッチ

2023年09月26日

第667回 相続整理に競売活用

 形式競売と呼ばれる競売がある。共有関係にある不動産を不動産競売により整理・換金するものである。この整理対象になる共有関係の多くは相続により発生する。ちなみに相続人が多数になればなるほど、相続財産処分の協議は纏まりにくい。それは相続人間の意見集約が難しいこともあるが、相続人が高齢化している場合は意思能力が乏しくなることも処分合意形成の障害になる。

 9月13日開札でJR中央線「西荻窪」駅徒歩約8分に立地する土地付一戸建が対象になった。土地は西側と南側で幅員4m未満の私道に面する約33坪で、その上の建物は古家である。この土地建物が先述の相続による共有関係から発した競売であった。その共有者数は16名に及び、各共有者の共有持分は5%弱から14%強までの間で相違している。

 おそらくは被相続人の兄弟姉妹とその子(被相続人から考えて甥や姪)らが相続したと思われる。共有者同士で集まり協議することも実際はかなり大変なことだったと察せられ、今般のように競売を利用しての換金、分配に至ったようだ。

 この物件の売却基準価額は4536万円であったが、これに対し入札が大量23本入り、最高価8300万円にて落札されていった。売却基準価額に対する上乗せ率は約83%と高い結果であった。これはこの物件が故人の住まいであり、現空だったことが大きな要因だろう。

 今後こういった相続に起因する共有物分割のための競売利用はさらに広がりそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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