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東京競売ウォッチ

2020年12月15日

第531回 東雲タワーマンションに63条2項申出額

 競売には抵当権や根抵当権などの担保権実行で行われるいわゆるケ事件と裁判や和解調書もしくは公正証書に基づく競売のヌ事件の2通りがある。ヌ事件の場合、差し押さえた不動産は先に抵当権等が設定されていると、債権者はその後順位として、先の抵当権者の債権の配当の後に配当を受けることになる。

 11月18日開札での東京メトロ有楽町線「辰巳」駅徒歩約11分に立地する築11年強のタワーマンションがこのヌ事件であった。専有面積約21.5坪の2LDKの部屋が対象で、第1番に住宅金融支援機構が債権者の抵当権が設定されている。フラット35と呼ばれる住宅ローンと思われるが、こちらの方は返済の延滞がないのか、差押えになっていない。

 しかし、他の債務があり、その債権者のうち1社が裁判を経由して差押えし、競売に至った。ただこの物件の買受可能価額(売却基準価額の8割相当で最低売却価格)で仮に競落された場合、差押え債権者に配当が回らないと見られる。というのはこの物件に民事執行法63条2項の申出額4183万円が設定されていることからそれが分かる。

 この申出額は当該差押え債権者に配当が生ずる最低限の価格であり、その額を上回る入札が無い場合は差押え債権者が当該申出額で買い受ける約定のもと競売が実行されているのである。マンション相場が堅調であることでこういった案件も出てくる。結果は入札24本が集まり、最高価5500万円にて競落された。差押え債権者には相当額配当されるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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