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東京競売ウォッチ

2015年5月19日

第277回 足が速い築淺のワンルーム

 ワンルームマンション、とくに築浅で投資ローンがつく物件は足が速いようだ。競売の世界でも、築浅ワンルームは高上乗せ率で競落されている。

 4月23日開札で売却基準価額の2倍超、上乗せ率100%を超えた落札があったのが、JR総武快速線「馬喰町」駅徒歩約3分に立地する専有面積6坪強のワンルームマンションである。築年は平成16年1月であるから、築後10年強が経過した物件である。

 現状、賃料は月額総額で85,000円、年額にして102万円である。管理費・修繕積立金の年額は24万円弱、固定資産税等は年額5万円強である。現賃借人を前提とした実質年収は73万円であり、これに対し、売却基準価額は788万円であるので、年9%強の利回り水準である。

 これに対し、入札は19本入り、最高価は1,605万円で、上乗せ率は103%超であった。この競落では、年利回りは実質4.5%ほどである。

 ところで、この物件を競落したのは再販業者と思われる。ということは、競落価格にマージンを付加して再販市場に出すことになる。おそらくは10%以上のマージンであろうから、登録免許税、不動産取得税などのコストも考慮するならば、売値は2,000万円以上になる可能性が高い。

 とすると、これを購入する投資家は、年約3.7%の利回りしか得られない。建物の減価や賃貸の空室を考えれば、売買価格や賃料の値上がりが期待できなければ、プラス投資にならないように思う。

 とくに住宅賃料については、現在上昇気配は極めて限定的である。したがって、その点でも現在の競落水準は高いと思われる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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