リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2016年4月12日

第318回 新大塚の収益マンション1棟

 欧州に続いてマイナス金利という未体験ゾーンに突入した日本である。貸出金利の低下によって不動産の期待利回りも低下するのか。3月10日開札で、今年最高の入札本数88本を集めたのは、1棟の収益目的のマンションであった。その物件は東京メトロ丸ノ内線「新大塚」駅徒歩約6分に立地する。ワンルーム12戸と3LDK1戸、計13戸からなり、築25年強の鉄筋コンクリート造である。土地は東側で幅員約4mの私道、北側で幅員約3.2mの公道にそれぞれ面する約57坪であった。

 また年収は約1,000万円見込める物件である。固定資産税等やランニングコストを考えると、純収入はおそらく年850万円ぐらいではないだろうか。売却基準価額は7,070万円で、実質年12%の利回りの水準であった。これに対し、落札価格は2億1,610万円で、売却基準価額の3倍を超える水準だった。この価格であると、利回りとしては実質年4%程度である。

 ちなみに、この物件の土地の正面路線価は1坪約120万円である。敷地が約57坪であるから、土地の相続税評価額は約6,800万円で、建物の固定資産税評価額は3500万円程度と見られる。したがって、相続税評価額の土地建物合計は1億円強ではないだろうか。ゆえに競落価格は、その2倍程度ということになる。

 銀行等が通常用いる担保評価は積算評価がベースであるが、土地は先の物件のような住宅地で相続税評価額の1.2~1.3倍で、建物は固定資産税評価額程度と見ることが多い。そうすると、本物件の銀行等の担保評価額は1億2,000万円程度だろう。

 ローンを使うとして、売買価格が2億円を超えるとなれば、購入には1億円程度の自己資金を要しそうだ。ただマイナス金利時代では、銀行も融資額を積極的に多くするかもしれない。それにしても競落水準が高い感じがする。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber

コラム一覧

山田純男 東京競売ウォッチ

2024年05月14日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.