リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2011年1月11日

第73回競売市場の分析(上)

 今週と来週、本欄では2010年の東京地裁本庁の競売市場を分析していきたい。まず表1に記載のとおり、10年の対象物件数は対前年(09年)比で約35%の減少となった。09年下半期開札件数に対象物件数が減少に転じた流れを引き継ぎ、通年で大きく数を減らす結果となった。

 この原因は金融機関が中小企業金融安定化法の影響もあって、返済猶予などにより競売による債権回収を抑制したことにあろう。

 また、2010年の期間入札の売却率は物件数の減少と反対に、8ポイント以上の大幅な上昇となった(表1参照)。

 過熱とも言える競売市場であるが、これを牽引したのはマンションであった。表2に種別内訳が掲載されているが、2010年はマンション比率が09年比で約7.3ポイント上昇している。マンション比率上昇が売却率上昇に結びついた面もあろう。

 2010年マンションへの入札激化のピークは5月から8月であったが、それを象徴するのが6月3日開札で、都営大江戸線「東中野」徒歩8分に立地する専有面積約17坪の2LDKのマンションであった。

 売却基準価額1,214万円に対し、通年で最高入札本数である64本が集まり、売却基準価額の3倍を超える最高価3,688万円にて業者に落札されたのである。

 そのほか、中古マンション市場が好調であることを背景に、従来、比較的人気が低かった城東地域のマンションにも大量の入札があった。次回に詳細は述べるが、入札価格も総じて強気の設定がなされた1年であった。



山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber

コラム一覧

山田純男 東京競売ウォッチ

2024年05月14日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.