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東京競売ウォッチ

2014年12月9日

第258回 蔵前の底地に大量44本の入札

 競落率100%が続く東京地裁であるが、11月20日では、珍しいことがあった。それは、借地権付建物の敷地、つまり底地に対し大量44本もの入札が集まったことである。

 その底地は台東区蔵前に立地する約35坪で、月額地代は13万円であった。元来、底地は競売市場には滅多に出てこない。金融機関が底地を担保にして融資を行う機会がないのである。

 今回の底地の競売も、金融機関の担保権の実行による競売ではない。詳しい経緯は知れないが、身内間の争いの果ての競売のようだ。そもそもこの底地は、借地権者である法人の代表者個人が所有していたところ、その所有者が亡くなり、親戚が相続している。そして、その相続人が借地権者である法人との間で裁判があり、結果として借地権者が勝訴し、当該底地を差押えたのである。したがって、この競売事件はヌ事件であった。

 さて、この大量入札を招いたのは、年間利回りがかなり高水準であることにある。地代収入が年間156万円あるのに対して、売却基準価額が753万円で、予想される固定資産税等の負担を差し引いても年利回り15%近い。しかし、結果として競落されたのはその売却基準価額の3.5倍強の2,666万円強であった。これは年4%程度の利回りである。

 この開札結果からわかるのは、底地でも収益性に注目して入札がなされるということであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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